6月6日
梅雨入りしたらしいですね。
一日中雨だった。水色の傘を片手に、じめじめした四条通りを、軽い足取りで、 いざ行かん。
大学の友人とディナーにイタリアンを食べに行った。彼女と私は、どちらも身長150センチ未満と小柄で 髪の毛の長さも同じくらい。何も知らない第三者からみれば、私たちはなんだかよく似ているんだろう。
しかし、私たちの考え方、行動の傾向は、真逆だといっていいほど異なっている。物事を、より自然に、流れに身を任せて緩やかに捉えていこうとするわたしと、自分の確固たる意志を持ち、違和感を感じたら、たとえ不自然であろうとも、その違和感を前面に相手に向けて表現せんとする彼女。
「日本人は、ほんまに怒らなさすぎやねん。」
と可愛らしい名前のついた甘いいカクテルを飲みながら彼女が嘆く。
「でもさあ、私たちを不愉快にしたその相手にも、そうするに至ったそれなりの理由があるんだと思うよ。怒っても、何も解決しないじゃ〜ん」
ビールのグラスについた水滴を指でなぞりながら、わたしがそう返す。
「解決するために、怒るんじゃないねんで。私は、あなたに怒っています!っていう意思を伝えたいだけやねん。そのことを相手にわかってほしい。」
「うーん……」
彼女と別れたあとの湿った帰路、ほろ酔いだった私たちのそんな会話をひとり思い出した。
私の胸中にだって、しっかりドロドロした感情は溜まっているし、「私はとても悲しい」って叫びたかったり、「ふざけんなよてめえ」と吐き出したいことだって多々ある。
でもその負の感情を、相手に分からせようとすることは、単なる自分のエゴであると思っていた。エゴイスト。幼くて未熟、感情の防波堤がまだ未完成な人間のすること。私はそうなってはいけないそうなりたくはない。そう思ってたし、思ってる、つもり。
でも意外と、素直に感情を表現するのも悪くないのかもしれないな。そんな生き方のほうが、すっきりさっぱり、サラッとしている。シンプルで、清潔だ。お酒が回って、ずいぶん呑気になっている頭で、ふわっとそう考えていた。
雨はすっかり止み、少し湿度を含んだ涼しい夜風が私の肌を優しく撫でる。地下鉄に乗るのはやめて、今日は歩いて帰ろっか。
音楽を聴きながら、私が かつて気持ちをちゃんと伝えられなかった人たちのことを思う、午前0時の烏丸通。彼らにも、敢えて私に伝えなかったことが、少なからずはあるんだろうね。なんか、ごめんね。
それではみなさん、おやすみなさい。今日もお疲れ様でございました。